Essay −イギリス・英語教育学の現場から−
 
英語屋専任講師 古澤 が、2003-2005を過ごしたイギリスでの留学生活で
英語教育について考え、また感じたことをまとめたエッセイ集です。
 
参考
留学先
 
英国 マンチェスター大学
The University of Manchester
The University of Manchester
公式ホームページ
(日本語) (English)
 
コース
教育学修士課程・英語教授法専攻
Master of Education in
English Language Teaching
マンチェスター遠景
 
英語屋について
TOEIC専門の当塾は、   
講師古澤が英国より帰国後 2005年8月から再開しました。
英語屋
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2004年度
 2月 There is no best method. 最高のメソッドなんてものはない?
 3月 There are five types of knowledge  5種類の知識とは
 4月 Tackle the micro-skills!  ミクロ・スキルを身につけろ!
 5月 What makes you a good teacher?  いい教師って?
 6月 Native speaker model syndrome  ネイティブ病
 7月 Native speaker model syndrome Part 2  ネイティブ病 その2
 8月 Reified concepts of Japaneseness  承認された"日本人論"
 9月 Otherisation  他人化、別モノ化
10月 TCNOR (Teaching Chinese for No Obvious Reasons)
      特別に学ぶ理由がない人に対する中国語指導
11月 Racism in ESL/EFL  英語教育界での差別意識
12月 Motivation for language learning  語学学習の動機付け
2005年度
 6月 Mission plausible  実行可能性のある目標
 7月 Mission for fun!  楽しむための目標



 
 ● 2004年/2月 最高のメソッドなんてものはない?


2003年9月から始まったこのコースも、最初の学期が終了しました。
このエッセイの第1回目は
秋学期で学んだことを少しまとめておきたいと思います。

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There is no best method. (最高のメソッドなんてものはない)

私が留学を決意した理由の1つが
「正式に教授法を学んだことがないから、最新のメソッドをじっくり学びたい」というものでした。

日本でもコミュニカティブメソッドやオーディオリンガルメソッドを主体としている学校は
ありますが、英語屋の場合は いわゆる「古澤メソッド」。

私の完全なる自己流指導法を通しておりました。


さてさて、意気揚々と受講しましたのがその名も
「Approaches, methods and techiniques in Language teaching」 。

12週でいろいろ最新のメソッドを学ぶんだろう、なんて思っておりましたら、
担当教官が言いますには「There is no best method. 」 。

なぜ?なぜ?なぜ?

へ??なんで?そんなん言わんと教えて〜や。
わざわざ日本から来たんやしー。 横の中国人中国人も口を尖らせてぶちぶち言ってます。


まあ、先生の言い分も聞いてみよか。・・ふむふむ。なるほど。

教師が既存のメソッドに頼って教えるのはよくないのか。
なになに、自動車会社の大量生産になぞらえてるぞ。

1つのメソッドで流れ作業のように教えることなると、教師の質も下がるし
モチベーションも下がる。
出来上がる製品(授業)も画一的で、ちょっと変わったニーズには柔軟に答えられないか。

なるほど!なるほど!
それは困る。 確かに困る。

じゃあ、どないしたらええねん。 ・・ふむふむ。
ふむふむ



学者が考えたメソッドに頼るのはよくないけど、それを参考にして
特定の状況(生徒)に合うように教師自らが工夫して修正していけばいい。


1つのメソッドにこだわることなく継続的に生徒や文献から学び続け、
変化し続けていけばいい。 なるほどねえー。

じゃあ、私がやってきたことと同じってわけ?・・いや、違うなあ。
私は学者の考えたメソッドなんて参考にしてなかったもんなあ。

というわけで、私が秋学期にやったのが今までの英語屋の授業の分析でした。
どこの部分が学者のいう理論にマッチしていて、
どの部分が矛盾するのか。
分析
こうして理論的、客観的に分析することにより、
英語屋の授業の どの部分を強化すればいいのかが見えてきました。

私の場合「メソッドに頼らない」という点はよかったようですが、
「頼りにしなさすぎ」という点が至らなかったようです。

えらい学者先生が吟味に吟味を重ねて考えた理論です、
利用しない手はありません。
                   利用しない手はない


それを元に私なりに、日本人成人に合う形でアレンジしていければ、
そして1つのメソッドに固執することなくずっと変化をしていければ、

これが本当の「古澤メソッド」になるのでは、と思っています。

どんな仕事でもそうですが、一生修行は続きますネ。

難しいことですが、帰国後に英語屋を再開するときには、
1つの答えを出していたいと思っています。



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参考文献参考文献


Prabhu NS (1990) There is no best method ? Why?
 TESOL Quarterly 24/2: 161-176

・Tuffs R (1995) Language teaching in the post-Fordiest era,
 System , 23/4: 491-501

・Kumaravadivelu B (1994) The Postmethod Condition:
 (E)merging Strategies for Second/Foreign Language Teaching,
 TESOL Quarterly
28/1: 27-48
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 ● 2004年/3月 5種類の知識とは


マンチェスター大学の教育学修士課程(英語教授法専攻)も2月3日から
後期に入りました。

私が登録したクラスは    ・Classroom research
                     ・Course design and evaluation
                     ・Education of language teachers の3つです。

今回は、この中の「Classroom research」から学んだことを
ご紹介したいと思います。


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There are five types of knowledge (5種類の知識とは)


Classroom research というクラスは、
「どこぞの学者のリサーチ結果に頼って教授方法を模索するのではなく、
英語教師が自分の教室・生徒を研究対象にして自らリサーチすることにより、
ティーチングを改善していこう!」という 考え方に基づいて
必要なリサーチ力を身につけるためのクラスです。

さて、1回目のレッスンでいきなり出てきたのが冒頭の言葉。
five types of knowledge

5つ並べて書いてみますね。
1. knowledge as belief (個人的信念)
2. knowledge as authority (権威)
3. a priori knowledge (論理的帰結)
4. knowledge as experience (個人の経験)
5. empirical knowledge (リサーチ結果)


具体的に、ここでは「 英語を話すには、英語圏で生活するに限る
というknowledgeを例に1つ1つを説明してみましょう。



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1. knowledge as belief 個人的信念

たとえば関西弁で言いますと、
「英語?アメリカいったら そのへんのガキんちょでも 話してるやん。
ごちゃごちゃ勉強せーへんでも とりあえずアメリカ行って
生活してたらしゃべれるようになるん ちゃうかな〜。。」 ということ。

・・・根拠は特にないけど なぜかいつのまにかそう信じている。
そういう知識がknowledge as beliefなんです。



2. knowledge as authority 権威

またまた関西弁で例えると、
「あの俳優のXXさんが TVで言うてたけどな、英語なんて大嫌いやってんて。
それがニューヨークで仕事しているうちに友達もできて、しゃべれるように
なってんて。やっぱ、外国行くのが一番早いんちゃう〜。」 てな感じ。

・・・この場合、根拠は「俳優のXXさん」の権威。
「この人がいうことなら間違いがない!」
「その道の権威がいうこと」に基づく こんな知識がknowledge as authorityです。



3. a priori knowledge 論理的帰結

おなじみ関西弁です。
「日本人が英語がなかなかしゃべれへんのってインプットが少ないかららしいわ〜。
こないだ読んだKrashenとかいう学者の本に書いてあってん。
ってことは、一番の近道は海外で英語漬けで生活することちゃう?」

・・・この場合、権威(Krashen)が 唱える説に基づいて、自分なりに 論理的に
発展させたそんな知識がa priori knowledgeです。



4. knowledge as experience 個人的経験

人から経験した話を耳にする事はよくありませんか?
「私?英語なんて全然できひんかってん。
ダンナの転勤で仕方なく ロスについていってんけどな最初はつらかったで〜。
なんもわからんかったもん。
でもTV見てるうちになんとなく 聞き取れるようになってきて
最後はいい友達できたで〜。
日本で英会話学校行くくらいやったら、 向こうで住んだほうがいいと思うよ〜。」

・・・自分の個人的経験を 根拠にした、そんな知識が knowledge as experience。



5. empirical knowledge リサーチに基づく

おなじみ関西弁。
「こないだ、日本人の語学留学生を対象にするリサーチ結果を読んだんやけどな、
イギリス来るまで英語がほとんど しゃべれへんかったって人でも
少なくともXX年経ったら、日常会話には 困らなくなってる人が多かったわ。
XX年っていうのが長いか短いかは 別問題やけど、やっぱり海外行くのが
よさそうやな〜。」
(注:このリサーチ結果は架空です)

こういう生のデータを集めた リサーチに基づく知識。
これがempirical knowledge。


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・・・以上、5つの種類の「知識」を例を挙げてご紹介してみました。
いかがでしょうか?
ふだん何気なく、 「これがいい」「こうすべき」と
思っていること、断言していることも こうやって分類してみると
案外、根拠が怪しかったりしますよね。

ここで私が学んだ大事なことは
1〜5のknowledgeのどれがよくて どれが間違っている、ということではなく
1〜5のバランスが大事、ということでした。

             バランスが大事
英語教師というのは、
自らの経験・信念に基づく「英語学習法」を 生徒の皆さんにご紹介することが
少なくありません。
私の場合はディクテーション。


あらゆる人に「ディクテーションはいいよ〜」と断言してきましたが
この根拠ってなに?と改めて 自分に問いかけました。


確かに「自分」というサンプルでは成功した勉強方法だけど、
それってknowledge as experience だけ?ううむ。
そう考えると、knowledge as authorityとか
empirical knowledgeが足りないかなあ。
もしかして、もっともっと優れた学習法があるのかもしれないし!


これに気づいたとき教師はさらに飛躍できるように思います。
思い込みや限られた個人の経験だけに頼ることなく、自分に問いかけ続けること!
これを私も信条にしたいと思います。
教師は飛躍できる
英語学習者のみなさんは世の中にあふれるあらゆる英語学習法の
どれを信じたらいいのか迷われることが多いと思います。


そんなとき「この人は一体どのknowledgeに基づいて
主張しているのかな」と考えてみると振り回されずにすむかもしれませんね。


・・さて、最後にディクテーションですが関連する研究論文がありました。
ディクテーションが確かに日本人学生のリスニング力アップに
効果があったという結果です(参考文献参照)。
ちょっとホッとしたワタシ・・ほっ

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参考文献参考文献


Seliger, H. & Shohamy, E. (1989)
Second Language Research Methods, Oxford: O.U.P.

Krashen, S.D. (1982)
Principles and Practice in Second Language Acquisition, Oxford, Pergamon

Takeuchi, O (1997) Dictation: Is it really effective for language teaching?
Kansai University, Audio-Visual Education 20
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 ● 2004年/4月 ミクロ・スキルを身につけろ!


リスニングが伸びない、とご相談を受けることが よくあります。

いったいどうしたらリスニングは 伸びるのでしょう?
今日は、最新のリスニング学習法についてご紹介したいと思います。



Tackle the micro-skills! (ミクロ・スキルを身につけろ!)

リスニングスキルと一言でいっても 実は1つのスキルではなく
多数のスキル(ミクロ・スキル)が 組み合わさっています。

英語の音が耳に入ってくると たくさんのミクロ・スキルが働いて
脳の中では次のようなことが 起こるそうです:
英語の音が耳に入ってくる
             矢印
1 .perceptual processing (認知処理)
2 .parsing        (逐語理解)
3 .utilisation      (全体的理解)

では最初のステージから ご紹介しましょう。



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1.perceptual processing (認知処理)


言葉は、1つ1つの音節が バラバラに聞こえるのではなく
ひとつの流れとして聞こえます。
例えば、

「ヒーシュラゥタッピラ」
と聞こえたとします(注:米アクセント)。
音節がひとつの流れとして聞こえる



これを 意味の塊に「分解する」、これが perceptual processingといわれる段階です。

「ヒー」 he
「シュラゥ」should have
「タッピラ」???

このように「分解」できるように なるにはどうしたらいいでしょう。
同じ英語を100回聞いても分解できるとは限りません。

この例で大事なミクロ・スキルとは
「英語の発音のルールを知る」
「英文法の知識を身につける」

この2つでしょう。

特に「発音のルール」。
例えば should have が 「シュラゥ」に聞こえる、と知ることが、
特にリスニング初心者にとっては重要ですね。

では、次のステージに 進んでみましょう。

         次のステージに進みましょう


2.parsing (逐語理解)

さて、音を塊に分解することに 成功したら、次は その塊ごとに意味を理解する
作業に取り掛かります。

といっても、「日本語に訳す」のではありません。
そんな時間はありません。
頭の中に意味が浮かんでいる、そんな状態で OKです。

「ヒー」 彼は
「シュラゥ」すべきやったなあ
「タッピラ」???
   (注:ここでは説明のために、日本語の意味をつけさせていただきました。)


この時点で生じる問題の多くは「単語の意味がわからない」です。
ここで必死で答えを探して脳みその引き出しをガンガン開けていると
事態は最悪の方向へ。


そんなことしてる間に新しい英語の音が次から次へと耳に入ってくるので
parsingされない音がどんどん山積みされていきます。
そしてパニック!!


この時点で大事なミクロ・スキルは
「瞬時に意味がわかる単語の量を増やす」
そして、さらに大事なのは
「知らない単語はさらっと流す」
この2つですね。

では、最終ステージです!
                 最終ステージです!

3.utilisation (全体的理解)

言葉というのは文字通り訳しても役に立たないことが多いものです。


例えば、先生に「The door is open.」と言われたら。
直訳したら「ドアは開いてますよ」ですね。
でも、どういう意味でこう言われたのか。


「ドアは開いてるから入っていいよ」なのか。
はたまた
「ドアは開いてるから、さっさと出て行って」なのか。

これだけでは真意はつかみかねます。


真意を理解しなくてはコミュニケートできませんので、ここでutilisationの出番です。

ここでは、前後のやりとりや過去の経験・情報などから、
正しく真意を理解しようと脳が働きます。


さて、さっきの文章ですが
「ヒー」 彼は
「シュラゥ」すべきやったなあ
「タッピラ」???

全体的理解

前後にこんな会話があったらどうでしょう。


A「ニックに携帯電話貸したら、 プリペイド度数 全部使われてしもてん。」
B「He should have タッピラ」
A「そうやろー。普通、返すときにその分、払ってくれるやんなあ。」


いかがでしょう。 「タッピラ」がさっぱりわからなくても
きっと「携帯電話のプリペイド度数を増やす」という意味じゃないかな、と
想像できますよね。

そう、topped it up (top up = 携帯電話の度数を増やす) だったのです
( 2004/3月号のメルマガ参照 )。

ここで大事なミクロ・スキルは
「前後の文脈から意味を推察する。」
「携帯電話、プリペイド式などに関する基礎知識を持っている。」




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・・・いかがでしょう。
一口に「リスニング」と言っても実はたくさんの「ミクロ・スキル」が
同時に且つ瞬時に働いていることがおわかりいただけるのではないかと
思います(上記はほんの一例)。


リスニングは「聞き流していたら、自然に何を言っているか聞こえるようになる」と
いうものではなくこれらのスキルを身につけて初めて聞けるようになるもの、
というのが最近の学説です。


リスニングの学習をするときは「今、どのスキルを身につけようとしているのか」を
意識するところから始めてみましょう。


意識せずに聞き流しているだけではそれこそ100回聞いてもわからないまま・・・。

                 リスニングは意識して学習を。

私のお勧めは先月も少しお話した
「ディクテーション」=「聞いたものを書き取る」です。


これは初心者に特にお勧めで、主に
1.perceptual processing (認知処理)の
「英語の発音のルールを身につける」のに役立ちますが、
中級〜上級者にも高スピード・内容が難解・アクセントにくせがあるもの、
などを使えば十分役立ちます。


これに、他のスキルを身につける学習(文法、単語力、前後からの推察など)を
組み合わせていけばリスニングは着実に伸びていきます。


大丈夫、焦らず一歩一歩進んでいきましょう。
私も同じ道を通ってきました! にこ


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参考文献参考文献

Brown, G and Yule, G (1983) Teaching the Spoken Language:
An approach based on the analysis of conversational English,
Cambridge, CUP

Goh, CCM (2000) 'A cognitive perspective on language learners'
listening comprehension problems', System, 28: 55-75

Richards, JC (1985) The Context of Language Teaching, Cambridge, CUP

Ur, P (1984) Teaching Listening Comprehension, Cambridge, CUP
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 ● 2004年/5月 いい教師って?


どんな英語学校を選んだらいいのか、
どんな先生を選んだらいいのか・・。
これもよくご相談を受けるテーマです。

今月は「目指すべき教師像」について、
「英語教師の育成法」という授業から
学んだことをお話したいと思います。
教師をえらぶ



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では、まず 今月の一言

What makes you a good teacher? (いい教師って?)


今日は「野球選手」の例を使って話を進めていきたいと思います。

英語学習者はみな「プロ野球選手」です。

素振りや走り込みなどの基礎練習に加え、 実戦練習や試合などで
少しずつ力を蓄え、スキルを磨きます。


ただ、選手だけでは伸び悩む時期がある。
何をしたらいいのかわからないときがある。
そのときに「コーチ」が手を差し伸べます。


そう、「コーチ=語学教師」というわけです。


コーチ 語学教師
さてどんなコーチがいいコーチでしょうか?
ではそれを 5つの要素に分けてみましょう。

1. knowledge (知識)
2. skills (スキル、技)
3. attitude (態度、信念)
4. awareness (気づき)
5. personality (人格)


では具体的に、1つ1つを説明していきます。


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1. knowledge (知識)

バッティングコーチは、例えばどうやったらホームランが打てるのか、
熟知している必要があります。
しかも、1人1人の選手の特徴に合わせてどうやったらいいのか知っている。
これがいいコーチですね。

・・でも、ちょっと待ってください。

「ここはな、こんなふうにガーって打つんや!」
「グワーンってまわせばええんや」
なんてアドバイスをもらってもわかりませんよね。
バッター


挙句の果てには 「なんで、オレのいうことがわからんのや!」と怒り出したりする。
・・・わからんっちゅうねん。


そう、知識だけでは足りない。( しかも知識には5種類ある! )
名選手が名コーチになることは限らない、というのは
プロ野球界では常識のようです。
ネイティブが全員いい教師だと限らない、というのと同じですね。


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2.skills (スキル、技)

知識のあるコーチに、教え方のスキル・コミュニケーションのスキルが備われば
これはかなりポイントアップです。

「ここで右足を半歩前に出してみたら?」
「バットの握り方をこうしてみるとええで」 などなど。。
かなりいい感じです。

・・でも、ちょっと待ってください。

元ホームラン王のコーチがバント練習のアドバイスをする、と想像してみましょう。

「・・しょうもないなあー。バントなんてヘタレのすることやで。」
「こんなんやっても意味ないって。」
なんて心の中で思っていたとしたら・・?アドバイス


挙句の果てに、「もうええわ。バント練習なんて終わろうや」と早々に
終わらせたりする。 ・・・迷惑するのは選手やっちゅうねん。

そう、知識+スキルだけでもまだ足りません。
コーチの個人的な「信念」「態度」などが選手の成績にはかえってマイナスに
働いてしまうことがある。


英語学習でいうと、いくら知識+スキルがあっても
「英検なんてやったって意味ないのに」と思っている先生が教えると・・
と想像してみましょう。

自分の信念が、本当に生徒のためになっているのか、これを自問することは
教師にとってとても大事なことです。


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3.attitude (態度、信念)

知識、スキル、そして選手の成績にとってプラスになる信念を持っているコーチは
なかなかの優れもの。
選手から信頼され、慕われることでしょう。


・・でも、ちょっと待ってください。

その知識、
そのスキル、
そしてその信念、
そのままでいいですか?

信念
今の時代には通用しなくなっていませんか?
選手は違うことをやりたがっていませんか?
実はそれに気づいていないだけじゃないんですか?


英語学習でいうと、いくら知識+スキル+信念があっても
「私のやり方は10年前にXX博士が生み出した方法で、世界的にも認められて
いるから生徒には一番いいはず」・・と昔学んだセオリーに固執して
今の学習者のニーズには合っていないとしたら・・。


常に客観的に自分の知識・スキル・信念を見つめなおす努力をする、
これも教師には重要な資質ですね。



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4.awareness (気づき)

というわけで、知識+スキル+信念、
これに加えて自らの役割が果たして選手にプラスになっているのか、

常に自問自答し、意識的に見つめようとする。
そんなコーチは最高ですね。
気づきが大切

客観的な「気づき」がなければコーチは変わることはできない。
逆に言うと「気づき」があるコーチなら多少「知識」や「スキル」が足りなくても
どんどん向上していくでしょう。
平凡な選手が名コーチになるのはきっとこんな場合でしょうね。

さて、
この1〜4までがコーチ(=語学教師)の4要素です。
プロ意識を持って向上しようと思えば、きっと向上できる分野です。

でも、最後に1つ、なかなか変えられない要素が・・。



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5.personality (人格)

コーチ向きの「人柄」というものがあるのかどうかはよくわかりませんが、
「相性」というものは存在しますね。

このコーチとは馬が合う・・そんな感じでしょうか。

理屈ではなく、なぜか信頼できる、リラックスできる、
素直にアドバイスを聞ける、
そんなコーチがあなたにとってのベストコーチでしょう。


馬が合う
コーチ自身は自分の人柄を変えることは簡単にできないと思いますが
「馬が合う」選手が少ないようなら要注意!
コーチ業に向いていないのかもしれません。



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- - - さあ、いかがでしょう。
あなたの先生は1〜5のどの部分に優れている先生でしょうか?


教師も人間ですから「完璧」というわけにはいかなくても
どこかに強みがあるはず。

「自分のニーズにぴったりくる強みを持った先生を探す」
というのが私からの提言です。


例えば「文法を強化したい」なら1(知識)&2(スキル)に強い先生、
「どうも英語に自信が持てなくて・・」とメンタルな面を支えてほしいなら
3(信念)&5(人格)などなど。

もちろんどんな場合も「 4(気づき) 」は欠かせません。

                 教師

ここで、最初の前提に話を戻しましょう。
英語学習者=「プロ野球選手」です。

そう、コーチがそばで見ているときだけ練習をしていても、
コーチが言ったことだけをやっていても決して力はつきません。 プロ
自分の成績には自分が責任を取る、それがプロ。
                             
コーチ(英語学校や英語教材)を次々に解任する前に自分が果たすべき責任を
果たしているのか自問自答することを忘れないでいたら、
きっと試合で大活躍できる日もそう遠くないでしょう。


そして私は、選手(学習者)が自信をもって球場(実社会・試験場など)に向かえるよう、
コーチ(英語教師)として1〜5の要素をバランスよく 強化していきたいと思っています。

・・・道のりは果てしなく遠いけど。ase


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参考文献参考

Freeman, D. (1989) 'Teacher training, development and decision-making:
a model of teaching and related strategies for teacher education'
TESOL Quarterly 23/1: 27-45.

Strevens, P. (1974) 'Some basic principles of teacher training'
ELT Journal 29/1: 19-27.
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 ● 2004年/6月 ネイティブ病


後期の授業が終わり、
3本の論文の提出も無事終えることができました!
あとは修士論文に取り掛かるだけ。

・・「だけ」ったって
これが一番コワイんですけどね・・。汗


さて、後期になってノンネイティブの同級生が焦り始めました。

しぶり顔 「・・・どうしよう、もうそろそろ留学生活が終わるのに、
英語が完璧にならへん汗
泣き顔 「1年も留学したら、英語がネイティブと同じレベルになるって思われてるのに、
全然上達せーへん!」


彼女たちは、それぞれの国(中国、韓国など)で英語の教師をしています。
英国の大学院レベルの教育を英語で受けており、
全く問題のないレベルの高い英語力を持っている。

なのになのに「ネイティブ並」でないことを嘆き、憂いでいる。
・・・これはいったいどういうことでしょう?


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ここで 今月の一言

Native speaker model syndrome (ネイティブ病)

先月に引き続き、
今月もスポーツを例にとって 考えてみたいと思います。
今月は日本の国技、 相撲
                 

力士にとって体が大きいことは何より大事なこと。
ちゃんこをイヤになるくらい食べて太ろうと努力されるそうです。


でも、どうしても生まれつきの「差」というものがある。
例えば、舞の海はいくら努力しても曙のような体にはなれない。


これを英語学習となぞらえてみましょう。


ネイティブは曙のような「巨漢力士」、
私たちノンネイティブは舞の海のような「小兵力士」。


そこには既にハンデが存在します。
ハンデをなくしたいともがき、 努力する。それは決して無謀なことでも
無駄なことではありません。
                   軍配
ただ、こんな努力だったらどうでしょう?


◆◆◆ 1 ◆◆◆
『やっぱり力士の体は大きくないと!
体格やしゃべり方、歩き方なんかを 巨漢力士に近づけへんかったら
相手にしてもらえへんからな。』


◆◆◆ 2 ◆◆◆
『 同じ小兵力士から学ぶことなんて 何もない。
巨漢力士こそ相撲取りのあるべき姿やし、
小兵力士の技なんてなんかかっこ悪いわ。』


◆◆◆ 3 ◆◆◆
『巨漢力士に勝てたらカッコええぞ!
小兵力士はどうでもいいから巨漢力士にだけは負けたないねん! 』


いかがでしょう?
どこかずれてる・・と思われませんか?

もし現実の力士が上記のようなな努力をしていたら
舞の海や 千代の富士(昭和最後の大横綱)といった小さな
関取が、土俵を沸かすことは なかったのではないでしょうか?


取り組み

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ではここで、「相撲」を「英語学習」に置きなおして考えてみましょう。


◆◆◆ 症状1 ◆◆◆

相撲の場合 『 やっぱり力士の体は大きくなくっちゃ恥ずかしい。 』
    矢印
英語学習に置き換えると・・
『 ネイティブみたいな発音で話して振る舞いをするのってカッコいい!』
『 コミュニケーションができても日本人独特のアクセントで話したり、
 日本人ってわかるような服装で海外にいるのってカッコ悪い・・・』
ちゃんこ
      

  
◆◆◆ 症状2 ◆◆◆

相撲の場合『 同じ小兵力士から学ぶことなんて何もない。 』
    矢印
英語学習に置き換えると・・
『 英語はネイティブから学ぶべき!』
『 ネイティブレベルじゃない限り、“英語ができる”なんて言うべきじゃない』



◆◆◆ 症状3 ◆◆◆

『 小兵力士はどうでもいいから 巨漢力士にだけは負けたないねん!』
    矢印
英語学習に置き換えると・・
『 日本より海外で認められることのほうが大事!』
『 日本人の友達なんていなくてもいい。外人の友達がいるほうがカッコいいheart
『 日本人より外人と結婚してるほうがうらやましい・・』
                                  取り組み


このような自覚症状があてはまる方、「ネイティブ病」にかかっていますね。
実はかくいう私もかかっていました。
まだ完治したとはいえないと思います。表情

冒頭でお話した私の同級生たちも明らかにこの病気の患者です。


「ネイティブ病」とは・・
ネイティブが理想! ネイティブみたいになることが究極の目標。
そのために、かえって自分に自信が持てず、 コミュニケーションに支障をきたす。

または間違った努力をしてしまい、いつまでたってもネイティブ(巨漢力士)と
対等に勝負できない・・。 そういう症状のことです。



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では、いったいどんな努力をしたら 小兵力士が横綱になれるのでしょう?
次にネイティブ病の治療法を一緒に考えてみましょう。


 対策1 

「食べても大きくなれる限度があることを知る」
治療法

たまに日本で生まれ育ちながらネイティブ並の英語力を身につける方も
いらっしゃいますが、 その方たちを参考にしてもいいことは1つもありません。

彼らは言ってみれば「特殊なケース」。
オリンピック選手や天才歌手だと考えておきましょう。

私たち凡人が同じようなゴールを目指すと挫折感、敗北感などで
英語学習自体がイヤになってしまいます。

ネイティブ並になること、これを目標にすることをやめましょう。

では、何を目標にしたらいいのでしょう。
それは・・?
スプリンター   歌手



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 対策2 

「勝負に勝つことを意識する」

体を大きくすることだけに専念していたら自然に勝てるのでしょうか?

そんなわけはないですよね。      
それにはやはり技を磨かないと。
トロフィー

英語学習でいうと自分は英語を使って どんな勝負に挑みたいのか
考えてみる必要があります。
英語で何をしたいのか、なるべく具体的に考える。

「勝負に勝つ」ことを意識さえすればそのための対策(技)が見えてきます。
英語力だけでなくコミュニケーション法だったり
様々な専門知識であったり。


勝つためにはネイティブと同じ技を使っていてはムリ。
小兵には小兵なりの戦術があってしかるべき。

それを意識せず、がっぷり四つに組んでしまったら
負けは見えています。
小兵力士  巨漢力士

負けないために何をするのか、それを意識して技を磨くことが決め手。
漫然とネイティブと話す(巨漢力士と対戦する)
または
とりあえず海外に行く(弟子入りする)だけでは
いつまでたっても勝てるようにはならないのではないでしょうか。


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 対策3 

「小兵力士であることを誇りに思う」

小兵力士は決して巨漢力士の「未完成バージョン」
「子供バージョン」ではありません。


小兵力士はその体格のハンデをものともせず、
相撲界に乗り込んできた運動神経抜群のアスリートです。 山のような体躯の巨漢力士と対決する、その勇気たるや、
すばらしい!
取り組み

小兵力士であることは恥ずかしいことでないばかりか
誇るべきことでしょう。


同様に私たちはネイティブの「未完成版」でもないし、
「子供並みにしかしゃべれない人」でもありません。


日本語という世界でも類も見ない複雑な言語を自由自在に操れるだけでなく、
その言語から最も共通点が少ないと言われている英語を
多少なりとも操ることができる。


ネイティブ並でなくてもいいじゃないですか?


限られた英語力で、勇気を持ってコミュニケーションしようとする。
勝負に挑もうとする。



この勇気、心意気すばらしいではないですか。
自分に拍手!
英語を使う全ての日本人に拍手!です。
拍手喝采
ただ、誇りだけあっても勝つための努力をしなければ
いつまでたっても屈辱的な相撲しかできませんね。



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私もネイティブ並とはまだまだ言えない
自分の英語力を歯がゆく思うことがあります。

スラングはあまり知らないし、英語のジョークでもなかなか笑えません。
ただ、私にとって大事なのはそんなところではない。

私が勝負したいのは英語教育という土俵なのだと、土俵
その土俵でネイティブと堂々と勝負できることのほうが私にとっては
大事なのだと改めて思う今日この頃です。


ノンネイティブであることに誇りを持ちつつ、
勝負に勝てるように自分の技(英語+英語以外)を磨いていく。

今回のメルマガは英語学習者として、
自分に言い聞かせるように書かせていただきました。
ネイティブ病完治までがんばるぞー! 勝利

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参考文献参考文献


Cook V (1999) 'Going Beyond the Native Speaker in
Language Teaching' TESOL Quarterly, 33/2: 185-209
千代の富士貢 - Wikipedia -
舞の海秀平 - Wikipedia -

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 ● 2004年/7月 ネイティブ病その2



6月の「ネイティブ病」
のくだりについては大きな反響をいただきました。
その中で、読者のpapuwaさんからいただいたこんなメッセージを
ご紹介したいと思います。

  『筋肉には硬い筋肉とやわらかい筋肉の二種類があるそうで、
   スポーツによって必要とされるバランスが違うそうです。
   お相撲はやわらかい筋肉が重要だそうです。
   確かに、土俵際の下半身の粘りや伸びをみると、
   やわらかい筋肉というのも納得がいきます』
筋肉


子供のころからのお相撲ファンというpapuwaさんならではのメッセージですが、
これを読んで、なるほど!と膝を打ちました。

スポーツによって必要とされる筋肉のバランスが異なる・・・
英語学習におきなおすと、必要なスキル・知識のバランスは
「何のために英語を使うか」という目的によっておのずと異なる、ということ。

今日はこのことを考えてみたいと思います。



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ここで 今月の一言

Native speaker model syndrome Part 2 (ネイティブ病 その2)

英語を使う場面で必要とされるスキル・知識を「目的別」に考えてみたいと思います。
懐かしいドリフの「 もしも 」のコーナー風にやってみましょう! ドリフターズ

1. もしも、味にうるさい日本料理屋の亭主だったら・・

あなたはロンドンに和食の創作料理の店を出店することにしました。
ロンドンは日本料理の店もたーくさんありますので
差をつけるために、あなたは「味」にこだわることにしました。


その日に入った新鮮な食材だけを使って
お客さん一人一人の好みに合わせた料理を作る。

料理の腕には自信があるので、あなたは成功を確信しています。
ただ、英語力が初級レベルなのが不安の種。

さあ、あなたに一番必要なスキル・知識っていったい何でしょう?


私が思いついたのは・・  
◆ お客さんの好みを正確に聞き取ることができる。
◆ 食材の名前を正しい発音で言える。
◆ 料理について、思わずよだれが出そうな説明ができる。



これさえできれば、十分「味」で勝負できそうですね。
日本料理



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2.もしも、イギリス音楽を楽しみたい学生だったら・・

あなたは大学3年生。
昔からイギリスの音楽が好きでイギリスへ行くのが夢でした。

アルバイトでためたお金で2週間、イギリスにホームステイに行くことになり
今からウキウキ。

語学学校に行きながらなるべく本場の音楽を聴きに行きたいと思っています。
ただ、英語が初級レベルなのが不安の種。

さあ、あなたに一番必要なスキル・知識っていったい何でしょう?


私が思いついたのは・・

◆ ネットなどでライブなどの情報収集するための読解力
◆ ライブハウスなどにたどり着くための地図の読み方・
  バスや地下鉄などの乗り方

ライブ
◆ イギリスのアーティスト名・曲名などを英語で正確に言えると、
  現地の友達とも話がはずみます。

例:オアシス→Oasis(オエィシス)

これで、楽しい2週間になること間違いなし!



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3.もしも、口下手なMBAの生徒だったら・・

あなたは日本で長年準備をしてきた甲斐があって、
とうとうアメリカのビジネススクールに留学することになりました。


英語力は苦労の末、やっと上級レベルにまで到達しましたが、
不安なのが「ディスカッション」。


日本語でも口下手で、どちらかというと聞き上手なあなた。


ディスカッション
ビジネススクールのグループディスカッションについていけるのか
不安でたまりません。
さあ、あなたに一番必要なスキル・知識っていったい何でしょう?


私が思いついたのは・・

◆ 英語で聞き上手になるための相づちや質問スキル
◆ 間をつなぐ表現、時間を稼ぐ表現。
◆ 英語で書く力(話すかわりにメールなどで自分の意見を発信したり、
  ディスカッションの議事録を作ってメンバーに配信することによって貢献する)



そう、「話す」ことだけがコミュニケーションではないので
自分の強みを活かした方法を考えていけばいいのではないでしょうか?
むやみに英会話の練習をしても、ディスカッションで話せるようには
ならないかもしれません。



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いかがでしょうか?
3つの「 もしも 」をご紹介しましたが、
上記の「スキル・知識」はほんの一例ですので、他にもきっと
重要なものがあるでしょう。


目的
あくまでポイントは
どのケースも 「ネイティブ」並になることを目標にしていない 、ということ。


ネイティブのように発音したり、スラングを使ったりすることより
自分なりの「目的」に合わせて必要なスキルをバランスよく身につけようとすることが、目的を達するためには必要なのではないでしょうか。
私自身の目的は     目的
英語教育に関連する英語の文献を読んで、自分のレッスンに活かせる
 ヒントを得ること。また、必要を感じたら自分の発見を世界に発信すること。



このために必要なのは英語の文献を読みこなす読解力と英語で論文を書く力。
これらの筋肉を強化し続けていきたいと思っています。


あなたの目的はなんですか?
どんな筋肉が必要なのでしょうか?

目的はなんですか?
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参考文献参考文献


Cook V (1999) 'Going Beyond the Native Speaker in
Language Teaching' TESOL Quarterly, 33/2: 185-209
ドリフターズ「もしもシリーズ」 - wikipedia -
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 ● 2004年/8月 承認された"日本人論"



「日本人と英語」。
こんなタイトルで作文を書くとすればどんな内容が考えられるでしょう?

例えば
「日本人は英語は苦手。」
「日本の英語教育は間違っている。」
「日本人はシャイだし、自分の考えも持っていない。」
日本人と英語

このようなことを多くの人が考えられるのではないかと思いますが、
皆さんは いかがでしょうか?


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私は、この1年、継続して
「日本人が話すのを苦手とするのはなぜか?」というテーマを追いかけてきました。

まだ答えは出ていませんが、おぼろげながら見えてきたのは
上記のような「日本人って・・」というのは
幻想に過ぎないのではないか?ということ。


今月考えてみたいのは

Reified concepts of Japaneseness (承認された"日本人論")


「日本人は英語は苦手。」
「日本の英語教育は間違っている。」
「日本人はシャイで、自分の意見を持っていない。」

上記のようなこと、
あなたはどうして信じるようになったのですか?
苦手


・・担当教官からこのように聞かれたとき、私ははっきりとは答えられませんでした。


いつのまにか、ごく自然に私の頭の中に染み付いていたからです。

きっと、テレビや新聞などのメディアの影響が大きかったのではないかと思います。

誰か1人の意見というわけではなく、
誰もが、当然至極、全くの事実のように語っているような気がしました。

でも、本当に事実なのでしょうか?
みなさんと一緒に1つ1つ考えてみましょう。


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1.日本人は英語は苦手?



日本語は、言語学的には
英語ととても遠いところに位置する言語のようです。

例えば、冠詞(a, an, the)。
日本語には冠詞というものは存在しませんので、
広い世界
どこでどういう冠詞をつけたらいいのか、日本人にとっては超難問です。


それに対して、スペイン語などの西欧言語の多くでは
冠詞がちゃんと存在するので英語に置き換えるだけでOKとのこと。


語源を同一にする単語も多く、彼らにとっては
覚えやすいことこの上ない。
西欧
それと比べると確かに日本語は遠い。日本人は不利ですよね。


でも、現代の日本語の中に取り入れられている外来語のほとんどが
英語であることを考えると、
本当に日本人は不利なのか疑問に思います。


例えば、中国人の場合。中国人
外来語は原則として漢字を使って表現するので英語そのままでは入ってきません。


カタカナを使えるわれわれ日本人って
案外、英語は身近な存在になっているのではないでしょうか?

(発音はともかく・・)


じゃあ、どうして英語が苦手なのか。
それは・・


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2. 日本の英語教育が間違っているから?

「文法中心の英語教育が間違っている、コミュニケーション中心でないと!」

日本政府も同様に考えているようですね。
確かに「文法と訳読中心」の語学学習は
英語教育界の中でも手厳しい批判を受けています。


語学学習
しかし、同時に、文法を教えることの重要性も見直されています。
文法の知識なしにコミュニケーションをとろうとしても限界がある。


特に、日本語を母国語としてマスターした成人にとって
英語という全く異なる言語を習得するのに、そのルール(文法)を知ることは
かえって効率のよい学習方法だと考えられています。


英語教師の多くは、こう懸念しています。
「日本人が文法をなおざりにしだしたら、
日本人の英語力はさらに低下するんちゃうやろか」



もちろん、文法偏重はよくないでしょう。
バランスよく4つの技能(読む、聞く、話す、書く)を
身につけられる学習が学校教育では好ましいと私も思いますが、
忘れてはならないのは学校で受身に授業を受けただけで
身につくほど語学は甘いものじゃないってこと。

今さら学校教育のせいにしても何の解決にもなりませんよね。


ほんなら、自分で努力してモノにするで!
そんな猛者が多いのも日本人。
学校教育

自主的に学ばれる方、語学留学する方、本当に努力を重ねていらっしゃいます。


なのに、なのに、語学学校で、英会話学校でどうも思ったように話せない。
それは・・


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3.日本人はシャイだから?

語学留学をされた方、
ラテン系(スペイン、中南米)のクラスメートのしゃべくりの勢いに
圧倒されたご経験ありませんか?


彼らは文法がめちゃくちゃでも発音にクセがあっても、
平気でしゃべくり倒す!

ラテン系

語学学校の先生は、そういう生徒と日本人を比べて
「日本人はシャイだね。でも、勇気を持って話そうね!」などと励ましてきたりします。


本当に日本人はシャイなのでしょうか?
シャイな人もいれば、シャイじゃない人もいる。
これは欧米人でも同じことでは?


日本ではシャイの「シ」の字も当てはまらないようなパンチのきいた方でも
英語圏では「シャイ」というかわいらしい仮面をついかぶってしまうのは何故?


実は、私にもその答えはわかりません。
わかってきたのは、答えは1つではないってこと。


あなたが英語で話すのを躊躇する理由は、
私の理由とは違うはず。

クラスメートの日本人ともきっと微妙に違うのです。


シャイという仮面をかぶる
誰かに「日本人ってXXだから、○○したらしゃべれるよ!」
と教えてもらっても、それは自分にあてはまるとは限らない。
自分で探していくしかないように思います。



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今月、私がお話したかったのは
「私は日本人。日本人ってXXだから、英語が話せなくても仕方ない」
      もしくは
「そんな自分が恥ずかしい」
なんて思いを私たちの多くが、少なからず持っていて、
その思い込みが実は英語学習の妨げになっているんじゃないかということ。


どっかの誰かが言っている「日本人ってXXだよね」という
日本人論に惑わされず、自分をじっくり見つめたほうが
「何故、自分は英語を話せないのか」という難問にきっと答えが見つかる、
そんな気がしています。


そして、英語教師としては勝手に「日本人ってこうだから」と思い込まず、
受講生1人1人が自分を見つめ直すお手伝いができれば、と思っています。


えいえいおー!
エイエイオー


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参考文献参考文献


Holliday, AR(1999) 'Small Cultures' Applied Linguistics,
20/2, 237-264
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 ● 2004年/9月 他人化、別モノ化


前月の Reified concepts of Japaneseness(承認された"日本人論") について
読者の方から、いくつかご意見・ご感想をメールでいただきました。

とてもうれしかったです!にこにこ
この場を借りて御礼申し上げます。


さて、いただいたメールの中で共通して指摘されていたのが

「 日本人論とかステレオタイプは、あながち間違いではないし、
  日本人を理解する上で利用価値があるのではないか 」
という点でした。


とても大事な問題ですので、
今回はこの点について、引き続き考えてみたいと思います。

題して:

Otherisation (他人化、別モノ化)


ステレオタイプには、ある種の真実が含まれる。
まず、これは本当でしょうか?

私がよく聞くステレオタイプをいくつか書き出してみます。
「関西人はおもしろい」
「女はロマンチック好き」
「日本人はカラオケ好き」

では次に、これを検証してみましょう。


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1.関西人はおもしろい

おもしろい=ユーモアのセンスがある、ということでしょう。
確かに、おもしろい人の人口密度で比較すると
関西は高いほうかもしれません。

でも、それでも 誰もがボケとツッコミを駆使できるわけではありません。

問題は、あなたが
「遠藤さんは関西出身か。じゃあ、おもしろいことが得意だろうな。
余興でもやってもらうか。」
なーんて軽く考えてしまうこと。


関西人である前に、遠藤さんは一人の個性あふれる人間です。
お笑いが大嫌い、って可能性があることを頭に入れておくほうが賢明ですよね。
  お笑い

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2.女はロマンチック好き


確かに、夜景が見れる場所に連れてって愛の告白・・
なんてシチュエーションが大好きな女性もいるでしょう。
でも、でも
そんなのが大嫌いな女性がいることも確か。
私も、どっちかと言うと苦手。(え、誰も聞いてへんって?)

問題は、あなたが
「真由ちゃんは女の子だから、絶対花束を渡して夜景の見えるところに
連れてったら喜ぶはず!」なんてはりきってしまうこと。
女性といっても、千差万別。
じっくり観察したほうが勝率上がります。
夜景


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3.日本人はカラオケ好き

カラオケは日本発の世界に誇るべき文化です。
確かに、日本人にカラオケは根付いていますが
カラオケは大の苦手、って人もたーくさんいますよね。
私は好きですけどね(注:選曲はかなり古いです)。

問題は、あなたが
「タケシタさんは日本人だから、カラオケが好きなはず。
接待はカラオケ中心でいこう!」なんて計画してしまうこと。
日本人といったって、いろいろいます。
ちゃんとタケシタさんの情報収集しなくっちゃ。
カラオケ



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いかがでしょう?
確かにステレオタイプには真実も含まれています。
しかし、それにあてはまらない人もたくさんいるのです。
あてはまらない場合、結構イタイ結果になってしまいます。


じゃあ、何のためにステレオタイプって存在するのでしょうか。

それは、 自分と異なる他者を理解しようとするときになるべく単純化して
しまったほうが楽だから
、といわれています。


これを otherisation(他人化) といいます。


単純化
自分とは異なる人と出会ったとき、共通点を探すよりも、
むしろ異質な部分をクローズアップし、且つ
それをステレオタイプ化することにより
「自分とは全く異なる、特殊な人々」というイメージを植えつける。

単純化することにより、 なるべく簡単にその人たちのことを
理解しようとするのです 。

人なんて、そんなに簡単に理解できるはずがないのに。


あなたの目の前の生徒さんが問題を抱えているとき、
あてはまるかどうかわからないステレオタイプを使って、
彼・彼女の行動を分析するよりも 生徒さん自身をよーく観察し、
彼らのことをわかろうと努力することのほうがきっと実りが多いはず。


「日本人はXXだから」と言うよりも、
「キミコはXXだから」
「タケシは○○だから」
などと、1人1人の性質や特徴から、
問題の原因や解決策を考えられる、
もしくは、本人が自分で考えるお手伝いができる、
そんな教師になりたいな・・と思っています。
お手伝い
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参考文献参考文献


Holliday, AR(1999) 'Small Cultures' Applied Linguistics,
20/2, 237-264

Holliday, A.R., M. Hyde & J. Kullman (2004)
"Intercultural Communication: An Advanced Resource Book"
London Routledge
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 ● 2004年/10月 特別に学ぶ理由がない人に対する中国語指導


アメリカでも、引き続き論文の参考になる文献を探している私ですが、
同時に、去年から始めた 中国語(普通語) の自習も続けています。

私の中国語のレベルは、英語で言えば中学1年生にも劣るレベルです。
ほとんどわかっちゃいません。


中国語を学び始めた理由は正直言いまして
「中国語に興味があった」からではなく、
「個人的にあまり興味がない言語(失礼ごめんなさい)」を強いて学んだとき、
どんな気持ちになるのか、どんなところでつまづくのか

それを自分で観察したかったからです。


私の生徒さんの中には、大嫌いな英語を会社に強制され
仕方なく学ぶ方も少なくなかったので 少しでもお役に立てるアイデアが浮かばないかな、と思ってのことでした。


そして、この中国語。確かにつらかった! 
いや、「つらかった」なんて過去形ではないな。
今でも楽になったとはいえません。
中国
この経験を通して、学んだことを今日はご紹介したいと思います。

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題して:

TCNOR (Teaching Chinese for No Obvious Reasons)
      特別に学ぶ理由がない人に対する中国語指導



中国語を学ぶにあたり、
私はマンチェスターの International Society が提供する語学クラスを受講しました。
これは、主にマンチェスター大学の学生がボランティアで講師を務め、
誰でも格安の料金で受講できるものです。


昨年10月に受講を始めた私でしたが、ボランティアのクラスなので
テキストなし、プリントもなし。
板書される中国語を書き写したノートだけが唯一の資料でした。


うかつにも中国語のテキスト類など、一切日本から
持ってこなかった私。

地獄のような (というのは大げさですが)3ヶ月が始まりました。
何が地獄かって? 

まあじっくり聞いてくださいよ〜〜。
鬼




1.何がダメなのかわからない。

先生は20歳くらいの中国人女性。女教師
かわいくって、スタイルもよくっておしゃれで、見てるだけでも幸せ・・・って
すっかりオッサンのような私。

流暢な英語を駆使して、まずは中国語の基本、
母音と子音の発音から教えてくれます。

し、し、しかし、難しい!困った顔


「r」の発音なぞ英語の「r」とも日本語の「ラリルレロ」とも違って、
どうしたらそんな音が口から出るのかわからんぞ 。


私が発音すると、美人の先生は表情を全く崩さず「NO. Try again」と言い放つ。
動揺しながらも、再度チャレンジ。

しかし、先生はその美しい顔をいっそうしかめるだけ。 しかめ顔
先生の発音を再度聞いても、私の発音との違いなんてさっぱりわからない。

・・おんなじやん!と心の中で叫び、焦る私。
どないしたらええねん。困った顔


ちょっとだけ舌の位置を変えてみる。
先生もあきらめたように「That was better.」と言って次の人へ。
betterのはずないのに〜汗
何がダメで、何が正しいのか、さーーっぱりわからん!どないしょ?



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2.使う場面が思い当たらない。

何週か経つと、数字を教えられた私たち。
1から始まって百。千。

まあここまではいいわな。

しかし、先生はその後も「簡単やから、覚えておこうね〜」と
万、億とガンガン黒板に書いていく。

・・・いや、ええけど、こんな数字、いつ使うの? なぜ?なぜ?なぜ?
私らみたいな初心者には当分はいらんやろ・・・。
必要なころには絶対忘れとるし。



かと思えば、小学校で中国人が皆やらされるという
早口言葉 を練習させられる私たち。

先生だけが「Fun!」と喜んでいる。
もう頼むわ〜。みんな目が笑ってへんやーん。
気づいてくれー!泣き顔


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3.素朴な疑問が噴出!

初心者ほど、素朴な疑問が頭に渦巻くもの。

「え、疑問文の語尾には『マ』がつくって言うてたのに、
  なんで、この文章にはついてへんの?」

「え、否定文は『不』がつくって言うてたのに、
  なんで、この文章には『没』がついてんの?」

女教師
いっぱい質問したいのに、先生は生徒の顔を見てくれないので
質問するタイミングがはかりにくい。

やっと質問しても、 なんだか 邪魔くさそうに答えられる
ちょっと質問する気も失せてしまうなあ・・。



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4.復習が求められないと・・

毎週新しい単語や表現を教えてくれる我らが老師(先生)。
でも、でも、残念ながら1回学んだものはそれっきり。

次のレッスンではほとんど出てこない。


我らが老師
こうなると、人間って 弱い ものですねー。
普段は復習の重要さをくどくどと説いている私なのに、
まーーったく復習をしない状態に。


かと思えば、突然
「3週前にこれ教えましたね〜。覚えていますか〜?」と・・・

そん なん言われても・・そんなん言われても・・


いいえ、きれいさっぱり忘れました。
ごめんちゃい。すみません
そう、私は復習をしない悪い生徒です。


ちょっと先生に怖い目をされただけで罪悪感でいっぱいになるワタシ



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いかがでしょう?
英語学習にもあてはまる部分がたくさんあったのではないでしょうか?


実はこれらの問題、次の学期にはほとんど解決してしまいました。
ラッキー!ラッキー


1.については、日本人が書いた中国語発音の本で学習することによって、
舌の動きや発音のコツがわかって、ずいぶん楽になりました。
ネイティブだけに頼った学習方法の穴 が1つ実感できました。


2〜4については
先生が変わったことによって一気に解決!
いやはや、初心者にとって教師&指導方法がこんなに大事だとは
自分でも驚きました。責任重大です。


我らが老師
初心者にやさしい教師になるために必要なことを
この2人の先生はたくさん教えてくれました。

老師、謝謝!うれしい


そして、これから数ヶ月は「初心者の独学がどんなに大変なのか、
どういうところがポイントなのか、
自ら体験して、探ってみたいと思っています( 結果は12月号参照 )。

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参考文献参考文献


上野 恵司(2002)、中国語発音の基礎 CDブック、 
日本放送出版協会

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 ● 2004年/11月 英語教育界での差別意識


ここナッシュビルでは、マンチェスターよりも
日本人の学者が書いた論文や書籍が手に入りやすく
最近はそれらをたくさん読んでいるのですが、おもしろい!うれしい
今まで読めなかったのが残念です。


で、今日はちょーーっと過激なタイトルです。

Racism in ESL/EFL (英語教育界での差別意識)


外国人に英語を教えるネイティブスピーカーって
どんな人が多いのでしょう?


日本国内では、バイト感覚で教える先生も多いかもしれませんが
大学で英語教育の学位を取得し、
論文を発表したり本を書いている先生たちは英語教育のプロ。
あたりまえの話ですが、真剣そのものです。


教師
人種や宗教などの枠を超え、
どんな生徒でも平等に指導しようと努力される方がほとんどでしょう。
そう、人種差別なんかとは縁がない存在?のはず。


しかし、 無意識ながら差別意識を持っている人が
多いのではないかという指摘があります。
これは、ネイティブに限らず、日本人講師にもあてはまるのです。



さあ、大変なことになりました。 ちょっと一緒に考えてみませんか?
自分自身にまずは問いかけてみましょう。


1.あなたは、英語でのコミュニケーションのほうが
     率直で、ダイレクトで、論理的だと思っていませんか?

2.あなたは、英語圏の人のように、どんなことでも
     自分の意見を持っていて、それを瞬時に表現できる
     ほうがいいに決まってる!と思っていませんか?

3.あなたは、英語の論文のほうが
     論旨が明解で、冗長なところがなく、優れていると思っていませんか?

4.あなたは、日本人は個人よりもグループの和を
     重んじると思っていませんか?

5.あなたは、日本人は他人に甘え、
     自己責任をとりたがらないと思っていませんか?



では、1つ1つ検証してみましょう。


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1.英語でのコミュニケーションのほうが
     率直・ダイレクト・論理的?


英語だからといって、欧米人だからといって、
コミュニケーションが全てダイレクトなわけはありません。


よく「日本人には建前と本音がある」なんて批判されますが、
これは欧米人とて同じこと。

コミュニケーション

例えば、彼氏の写真を見せられて、
「うわ〜、めっちゃブサイクやなあ」とたとえ英米人でも言いません。
「He is cute.」「He looks nice.」と おせじを言うのは当たり前 。

また、ディナーに誘われて、あまり気乗りがしないときも
「I don't want to go」なんて言ったら友達なくしちゃいますよ!
「I wish I could, but unfortunately, ....」と言い訳をひねり出します 。


そう、私たちと同じ。


また、論理的なコミュニケーションができるかどうかはそれこそ人それぞれ。
アメリカ人の会計士と仕事をしたときなど、
簡単な理屈をわかってもらえず苦労したことを思い出します。



区切り線

2.どんなことでも自分の意見を持っていて
     それを瞬時に表現できるほうが優れている?



日本人は自分の意見を持たない・・。
誰が言ったか、そういう批判は多いですね。


意見交換
本当に意見を持っていないかどうかは、ネットの掲示板などを見れば明らか。
自分の意見をしっかり持っている方は日本人にもたくさんいます。

逆に、英米人でも日和見的な発言ばかりして
自分の意見をしっかり持っていない人はもちろん存在します。

ただ、「英語」を使っての意見交換ですとわれわれノンネイティブは
「ハッタリ」をかますことができない 。

つまり、その場で適当に意見を作り上げて語ることが難しいのは仕方ないですよね。


さらに、ネイティブの 「ハッタリ」を見抜くこともわれわれには難しい。
だから、どうしても「日本人は英米人より意見を持たない」なんて
あらぬ批判に対抗できないのかも。

さらに言えば、日頃考えてもいなかったことについて
その場の思いつきで意見を言えることって、本当に大事なことでしょうか?

真剣に考える人ならば、軽くは口に出せないはず。
果たしてどちらがいいのか・・。



区切り線

3.英語の論文のほうが論旨が明解で、冗長なところがなく優れている?


英米の大学を出た方などでこういうことを言われる方がいらっしゃいます。
「日本の論文の書き方ってほんとダメ」

私がその方にお聞きするのは
「今までに、日本語の学術論文を何本読まれましたか? 」


たいていの方は、ほとんど読んでないんですね。
英語で読んだほうが多い。
じゃあ、英語のほうが読みやすいのも当然といや当然。

日本語の専門用語やアカデミックな表現に
慣れていないことは大きなハンデだからです。
論文


私も、英語で読んだ論文の数のほうが圧倒的に多いので、
日本語の論文のほうが抵抗感があります。

しかし、それを差し引いて比べてみると日、英どちらでも、
学術論文は同じような構成で書かれることに気づきました。

私の印象に過ぎませんが、別に英語だから論旨が明解というわけではなく、
わかりにくいのもたくさんあります。



区切り線

4.日本人は個人よりもグループの和を重んじる?


個人主義VS集団主義 。
西洋と東洋を比べるときによく使われる表現です。


日本人を論じた論文などではしょっちゅう
「出る杭は打たれる」ということわざが引用され、
まるでこういう感覚は日本やその他アジアの国にしかないような
印象を持ってしまいます。
集団


でも、果たしてそうでしょうか?


アメリカの大学生だったころ、キャンパス内にディスコがありました。
(古〜い、なんてツッコミ不要!)

田舎の学校だったので、ほとんどの生徒はジーパンで踊りに来ていたのですが
たまーにおしゃれして、ミニスカートをはいてきた生徒がいた日にゃ、
こぞってこんな言葉を浴びせるのです:


「Look at her! Can she breathe?」
  (ほら、見て見て。あの子あれで息できるの?)



タイトスカートだと、息が苦しそうだからそんな悪口を言われるんだ・・
と、そのミニスカートの子は嘆いていました。

多分、みんなもっとおしゃれしたかっただろうに
集団から浮いてしまうのがイヤで
ジーパンはいてたんでしょうねえーー。
タイトスカート

人間は社会動物。1人では決して生きられません。
全く自分の所属するグループを意識しない人は欧米でも少ないはず。
そして、日本でも、集団のことは気にならない人たくさんいますよね?



区切り線

◆ 5.日本人は他人に甘え、自己責任をとりたがらない?


「甘 えの構造 」という有名な日本人論が出版されてから、
もう30年以上経つというのにまだまだこの本は日本人を論じる際に
引用されています。
同時に、批判もされています。


作者の土居健郎は、「甘え」は日本人独特の心理なのだと主張しています。
「甘え」の概念なくしては日本人は語れないと。


本当に「甘え」は日本人独特の心理なのか?
私の専門外ですので難しい分析はできませんが、
甘えを
「他人への依存」、「愛され、受け入れられることを望むこと」と
定義するならば、どうも日本人独特とは思えません。
甘える

例えば、教師に「甘え」「依存」しているから、
日本人の生徒は教師が指示しないと勉強しない。
これ、ほんと?



確かに海外の語学学校などでは宿題なんてほんのちょっとだけ、
ということもあるようです。
自分から積極的に勉強していかないと「甘えている」といわれてしまう。


しかし、ちょっと待ってください。 それって当たり前では?
自発的に勉強するのっていくらやる気があっても大変です。


現にアメリカの ビジネススクール で学ぶエリートですら
「毎週宿題を出してくれ。でないと試験前にまとめて
      読んでしまうので、アタマに入らない」
と教授に訴えているそうです。

日本人が甘えているなら、彼らも相当甘えていることになるのでは?



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いかがでしょう。
今日は英語教育の現場でよく聞かれる5つ「発言」 の取り上げて、検証してみました。


5つとも間違っているとも言えないし正しいとも言えない・・
というのが私の印象ですがみなさんはいかがでしょう?


これらは otherisation(第8号) の一例ですね。
元々は日本人をよりよく知り、理解したい、という気持ちから
出てきているとは思いますが、効果はもしかして逆かも??


教師のみなさん、無意識に感じていること、考えていることが
実はとても偏った見方かもしれませんよね。
お互い、無意識に感じていることが
教師
「5つのKnowledge」(第2号) のどれから来ているのか検証していきたいですね。


また 学習者のみなさん、無意識に差別的な教師はたくさんいると思います。


悪気はないのでしょうが、彼らに影響されてしまうと
いつのまにか日本人であることを恥じてしまう可能性があります。

「日本人は・・」または「アメリカ人は・・」という表現を誰かが使ったら、
または自ら使っているのに気づいたら、
必ず「どういう根拠があるの?」とつっこんでみましょ!
・・あ、ケンカ腰にならないようにね〜。にこにこ



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参考文献参考文献


土井健郎(1971) 甘えの構造、弘文堂、東京

Kubota, R (1999) 'Japanese Culture Constructed by Discourses:
Implications for Applied Linguistics Research and ELT',
TESOL Quarterly, 33/1: 9-35

Kubota, R (2001) 'Discursive Construction of Images of US
Classrooms', TESOL Quarterly, 35/1: 9-38

Susser, B (1998) 'EFL's Othering of Japan: Orientalism in English
Language Teaching', JALT Journal, 20/1: 49-82

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 ● 2004年/12月 語学学習の動機付け


さて、アメリカでは 中国語自己学習していた私( 10月号参照 )。
たった数ヶ月ではありますが、その成果、
そしていろいろと気づいた点をご報告させていただきますね。


題して、

Motivation for language learning (語学学習の動機付け)


10月初旬にアメリカに来た時点で私は目標を定めました。

「毎日少しずつでも中国語をやろう!」
「イギリスに帰るまでに、 テキスト1冊を仕上げよう!

そして、帰国日から逆算して
1日当たりどの程度勉強すればいいのかを割り出しました。


計画通りに進めば、この1冊のテキストに書いてあることが
とりあえずはいったん頭に入ったことになる・・。
テキスト


それってスゴイんちゃうん〜、
私ってトライリンガル(三ヶ国語を操る人)に近づけたりするんちゃうん〜、
とまだ見ぬ自分にうっとり・・。

・・してるうちに、あっという間に9週間は過ぎていきました。

さて、まずは成果からご報告いたします:


1.テキスト1冊は仕上がったのか??

ズバリ申し上げましょう。
大方の予想どおり、答えは No!! 全然ダメでした。

テキストは全191ページ。CDが1枚ついています。
これを9週で仕上げようと思っていたのですが、
結局、手が出せたのは合計139ページ。72% 。


ま、いいんです。
計画どおり進まないこと、それ自体は問題じゃあない。
大事なのは、「何故?」って部分ですよね。


2.何故、計画通り勉強できなかったの?

使用したテキストはパート1〜5に分かれていました。
こまった
       テキスト


パート1;発音の基礎
パート2:文法
パート3:基本フレーズ
パート4:役立つフレーズ
パート5:トラベル会話集


では、パート1から敗因(?)を分析してみましょう。



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(1)パート1 発音

中国語を学ぶ上で、 発音 はめちゃくちゃ大事です。
四声ってものがあるので、これをいい加減に発音してしまうと、
全く違う意味になってしまう。
日本人からすると、よく似た音もちゃんと舌の位置などを変えて発音しないと
通じない・・。なかなか大変な言語ですなあ〜。


従って、昨年、発音の基礎は学んだとはいえ、
この9週間も、毎日、毎週、このパート1は復習することにした私。
といってもCDを聞いて、発音を練習するだけです。


これ、続いたのは最初の3週ほどでした。
別に時間がかかるわけでもなく、
別に難しいわけでもないのに何故続かないの??
発音練習


・・実は「 難しくないから 」だったのです。
単にCDを真似るだけ。1週間もやれば覚えてしまいます。
どうも退屈になってしまう。


それに、正しく発音できているかどうかは自分ではわからないので
やって意味があるのかどうかさえ疑問になってくる・・。

そうなるとダメですね。
最近は、このパート1をやらないといけないことすら私、忘れておりました〜。



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(2)パート2 文法

基礎文法がコンパクトにまとめてあるので、ここを何度も書き写しながら
頭に入れていく。。というのが当初の計画でした。

しか〜し!
書き写したのはこれまた最初の数回。
どうして??書き写すことくらい簡単なのに〜。

これ、単純に「 おもしろくない 」が原因でした。
正直に言いましょう。

書き写すこと自体はおもろない!
全然おもろない!
・・でも、それでもいい成果を生むからやるわけです。
おもしろくない


私の場合、 成果を生んでいるのかどうか試すすべがなかった・・。
試験もなければ、練習問題もない。
成果が見えにくいとき、「おもしろくない」が前面に出てしまうのですね。



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(3)パート3&4 フレーズ

この2つのパートは、日常会話に頻出のフレーズが
紹介されているところでなので、作戦としては、まずCDを聞いて真似をする。

暗記するまで繰り返し声に出して読む。
暗記できたら、今度は書き取りをする。
・・というものでした。

書き取りについては、「文法」のパート同様すぐに断念。
だって、おもしろくないんだもん・・。


しかーし、しかし、暗誦する部分ははまりました。いやぁ〜、楽しい!
ここが一番楽しかったところでした。


おもしろい
勝因は「 チャレンジング 」&「 成果が見える 」だと思います。
このCD、日本語→対応する中国語、という順番で収録されているのですが、
私は「日本語を聞いたらすぐに中国語が出てくる」状態を
目指して練習。CDと競争するかのごとく中国語を叫んでいました。


この「競争」がおもしろい。
自分に挑戦しているわけですね。

それに「覚えた」という事実はとてもわかりやすい。成果が目に見える。
うれしくなってくるので、練習が苦痛じゃない。
練習するから、また覚えられる。
いいスパイラルです。



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(4)パート5 トラベル会話集

フレーズ集とは違って、かなり長い文章が収録されています。
旅行に行ったら、耳にする、または口にする文章がちりばめられているのでしょう。


・・でも、私の食指は最後まで動かなかった。
そう、このパート、全く手をつけなかった のです。
どうして?
ヤル気喪失

「 使うことが当面ない 」「 かなり難しい 」というのが理由です。
私は中国や台湾に行く予定が今のところありません。

だから、旅行会話よりも、イギリスやアメリカにいる
中国人との会話に役立つフレーズのほうにより興味があるわけです。

また、えらく長い文章が多いので
「 あかん、私には難しそう 」という印象を持ったらもうダメ。
やる気喪失です。



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ここまでまとめてきて気づいたこと、
それは motivation(やる気) を維持することの難しさです。


私は昨年、語学教育心理学の授業で
motivationをテーマとして選び、レポートを書いたのですが
そのときには具体的に見えなかったものがまざまざと
見えてきました。

ちょっと列挙してみましょう:
ヤル気のカギ


1)タスク(学習作業)自体が楽しく、挑戦意欲がかきたてられるかどうか

2)成果の見えやすいかどうか

3)使用する場面がうかぶかどうか

4)自分にも「できる!」という自信がもてるかどうか(self-efficacy)



どうもこれらが鍵になるようにおもいます。
全てがそろえば言うことなし!ですがそうではなくても、
いくつか揃っていればやる気はなんとか維持できると思います。
ご自分で学習計画をたてられるときはこれらに気をつけられるといいですね。


また教師としては、安易に「はい、これ宿題!」とか
「これは自宅でやっておきましょう」と言うべきではないと痛感。
本当に学習者の身になれば、上記のようなポイントをいつも念頭において
自宅学習の指導をすべきだと思いました・・。


最後に、このメルマガを書いている最中に気づいたことを1点。

実は、このメルマガは数日にわたって書いたのですが
書いているうちに、萎えていた中国語学習意欲がムクムクとわいてきたのです。


なんじゃ、こりゃ?


中国

・・理由を考えてみたのですが、
計画の進捗状況をみなさんにご報告し、自分なりに敗因を分析したことで
やるべきこと、やっていなかったことが明確になってきたことが奏功したようです



つまり、学習計画をたてるだけで終わるのでははなく、
   「1.計画の内容を誰かに伝え」
   「2.計画の遂行状況を自分なりに分析して」
   「3.その状況を誰かに報告する」


という 3つのステップ をプラスすることにより
やる気が定期的に回復するのではないでしょうか。


この「 誰か 」は、別に叱咤激励することもなく
結果について批判・アドバイスする必要もない。
ただ、そこにいて、聞いてくれるだけでいい・・。


そう、みなさんのおかげで私のやる気も回復しました!
もしよろしければ、みなさんの学習計画を私にお知らせください。
影ながら応援させていただきます。



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参考文献参考文献


Bandura A (1997) Self-Efficacy: The Exercise of Control.
New York, W. H. Freeman and Company

Dornyei Z (2001) Motivational Strategies in the Language Classroom,
Cambridge, CUP

Locke EA and GP Latham (1990) A Theory of Goal Setting and Task Performance.
Englewood Cliffs, NJ, Prentice Hall
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 ● 2005年/6月 実行可能性のある目標


約1年半の留学生活を終えたわけですが、
単に修士号を取ることだけを目標にした留学にしたくなかったので
留学生活が始まる直前に、 ミッションステートメント(目標を記したもの)
残しておきました。


さあて、果たして当初の目的が達成できたのかどうか・・。
このメルマガを通して、私なりに検討してみたいと思います。

 
Mission plausible (実行可能性のある目標)


そのミッションステートメントには、
達成すべき大目標(ミッション)をこのように書いていました:

日本人の成人にぴったりの英語学習方法を探り、
             自分なりの方法論をまとめること



・・ううむ。我ながら、立派な目標ですねェ〜。
立派すぎて、ちょっとびびってしまいますが。

では、ご報告させていただきます:
目的地




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1.何故「日本人成人」に限定したのか?

私は、子供や中高生ではなく、主に学校教育で英語を
学んだことのある大人に対して英語を指導してきました。


既に母国語を高度にマスターし、且つ英語についての知識を多少なりとも
持っている成人には、成人なりの学びやすい形があると思っています。


また、日本人には日本人特有の強みや弱点があると思っています。
日本語やカタカナ語の影響で。


従って、日本人の成人にぴったりの教育方法を模索することは
私にとっては重要なテーマです。
日本人成人

留学以前にもそれを意識した教材開発及び授業を自分なりに行ってきましたが
留学を通じて、更にその知識を深めたいと思っていました。


留学すればそれを誰かが教えてくれる・・そんなことを
期待していたわけではありません。
イギリスの大学で学ぶのは全世界からやってくる英語教師たち。


それぞれのお国で教える方法を模索してやって来ます。
彼らを指導する教官は、当然のことながら
どこかの国に偏った指導方法を教えたりしません。
もっと 万国共通の、誰にでもあてはまる共通要素 を軸にして授業は進みます。


私は その「共通要素」をじっくり学び、自分なりに
「じゃあ、日本人成人向けならこうしたらええんちゃう?工夫していこう!」
というのが私のミッション
だったわけです。



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2.で、どんな方法論がまとまったの?

授業や文献以外にも、中国語を学ぶことにより
留学前には見えていなかったものが
多少なりとも見えてきました。

私が「これ使えるなぁ〜」と思った共通要素を
少しご紹介しますね:

見えてきた

(1)やる気(モチベーション)の源泉

語学学習にとって、やる気の保持というのはとても重要です。
語学をマスターするのは長い時間を要しますので、
「どうしても必要」だという人や
「なんかしらんけど、好き!」という人でないとやる気はすぐ失われてしまうからです。

私の中国語がそのいい例。
「どうしても必要」でもなければ「大好き!」な言語でもない。
やる気はすぐに薄れ、もう半年ほど実は学習してましぇん・・。

・・で、どうしたら簡単に失われてしまう「やる気」を維持できるのか。
私なりの結論ですが、

   (A)「続けていればこの言語を使えるようになる!」という自信、確信。

   (B)「言語以外の知的刺激」を与えること。


この2つが重要ではないかと思っています。


まず、(A) 「自信」 についてですが、
道程
私は正直言いまして、このまま学習を続けていても中国語が話せるように
なるという自信がありません。 全くありません。

理由はいろいろありますが、
一番の理由は「 道程が見えてこないから 」かもしれません。
これからたどらなくてはならない道のりの全体像が全くもって見えない。

どれくらい遠いのか、今、全体の何分の一進んだのか。
そんなこともわからず、ただひたすら進んでいくほど
ヒマではないし、中国語が不可欠な生活をしているわけでもない。


私が会計士試験を目指して勉強していたときに
やる気を高いレベルで維持できたのは・・・

きっと「このまま気合いれて勉強してたら合格できて、
合格できたら会計士補として仕事ができて、
今までより高いお給料ももらえて、うっしっし・・」と
バラ色の(?) 道のりが眼前にくっきりと浮かべられたから・・だったように思います。


語学教師として、このように「道のり」を明るく照らすナビになることは
非常に重要だと感じています。


次に、(B) 「言語以外の知的刺激」
言語とは「 情報 」を運ぶものですが、言語学習においては
その「情報」の 内容を軽視する傾向 があります。
TOEICの学習がその最たるもの。


TOEICの2時間の試験で、読んだり聞いたりする量は
大変なものですが、何か記憶に残ることってあるでしょうか?
知的刺激

同じ2時間かけて、例えば新聞や雑誌を読めば、
それこそ「へぇぇ〜」と思うことが1つや2つは見つかるでしょう。


語学学習の「やる気」がだんだんと薄れてしまうのは、
成人にとっては、与えられる「知的刺激」が少なすぎるから
かもしれません。
(言語そのものに知的好奇心を持てる方は別として)


成人が読んで、聞いて、その内容にワクワクしたり、
「へぇぇ〜」と思える情報を英語で提供することができたら、
やる気は簡単に失せないのではないかと思っています。



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(2)暗記と文字・音声の関係

言語学習において、避けられないのは 「暗記」
コミュニケーションのために英語を使おうと思っても、
単語や語法を知らなければ話になりません。

で、暗記の方法にはいろいろありますが、
まず私が興味を持ったのは「 耳で聞いて覚える 」方法。
文字に頼らず、耳で覚えるべき!という学習法が果たして効果的なのか。

留学中、ついに試してみました、中国語で!
日本語のあとに中国語が吹き込まれているCDを使って
そのまま覚えようとチャレンジしてみたのです。


・・結論から言いますと、私には合いませんでした。
確かにその瞬間は出来ます。中国語で言葉が出てきます。
わかった気になってます。

・・ でも、いざ中国人に話しかけようとして、
覚えたはずの表現が出てこないときのショックと言ったら!ガーン
ショック


しどろもどろの私の目の裏に浮かぶのは文字
そう、ぼや〜〜っとした漢字の文章だったのです。

なんで?? 耳で学んだはずなのに!
文字はほとんど気にしてなかったはずなのにぃ〜!しょっく


改めて、言語心理学で学んだ「記憶」についての文献にあたってみました。
確かに「音声」は記憶には重要だそうです。しかし、
実は 「視覚」に訴えるものも併用するとさらに効果がアップ するとのこと。


「視覚的に訴えるもの」・・ 文字、記号、絵など です。
ちょっと試してみましょう。

しんだちわらづはた 」これを覚えろ!と言われたら
心の中で勝手に漢字変換してしまいませんか?

死んだ血笑づ旗 ???」
文字
ま、正しいかどうかはおいておいて、覚えるのはこのほうが
ずっと楽ではないでしょうか?


更に「笑いながら旗を振っている血に染まった死体」
(ホラーですね、全く)を想像できればもう忘れないでしょ。
(ちなみに、本当の漢字名は 信達童子畑 。大阪府泉南市の地名です)。


というわけで、中国語の学習を通して、
文字・音声この両方が暗記には大事だということ・・つまり
音読筆写 の重要性を、留学前よりも強く実感いたしました。


ただこの「音読筆写」、 作業自体はおもしろくない
続けるのがちとつらい・・。
私自身がそうなんですから学習者の皆さんに、簡単には勧められません。
・・で、成人が飽きずに、刺激を受けつつ続けられる
音読筆写の方法を考えてみました。


まだ「試作」段階なので、これを、まずは自分を実験台にして
磨きをかけていきたいと思っています。



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さて、今回は私の留学のミッションが
どこまで達成できたのか、どのあたりがまだまだ足りないのか
ご報告を兼ねて書いてみました。


私自身、ミッション(目標・使命)で大事なのは、
実行不可能な無茶なものにしないこと、だと思っています。

もちろん「人間には不可能なんてない。可能性は無限だ!」と
おっしゃる方もいらっしゃいますが、
みっしょんいんぽっしぶる
あまりにミッションそのものにこだわると逆に縛られてしまうように思ってしまいます。

私のこのミッションは、そういう意味では無茶でした。
そう、ミッション・インポッシブル。


でも、それに気づいたのが留学の最大の成果かもしれません。
英語学習法なんて簡単に見つかるもんじゃあない。
教師自身が学び続けて、その先に、もしかしたら見えるかもしれない。
そういうもんだと、2年前の私は想像さえしていませんでした。


来月から、英語教育の現場に復帰する予定ですが、
私のこれからのミッションについては来月、最終号にて
ご報告させていただきたいと思っています。




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参考文献参考文献


Dornyei, Z. (2001a) Motivational Strategies in the Language Classroom,
Cambridge: Cambridge University Press

Baddeley, A.D. (1999) Essentials of Human Memory,
Hove: Psychology Press.

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 ● 2005年/7月 楽しむための目標


さて、先月号で予告をいたしましたが、最終号となる今月は、
私のこれからのミッションを披露させていただこうと思っています。


Mission for fun! (楽しむための目標)


起業をする際、ミッションステートメント なるものを
書くようにアドバイスされることが多いようです。


立ち上げようとする事業を通して、
ミッションステートメント
一体何を達成しようとしているのか、社会にどう貢献できるのか、
これらを書いたもの =
ミッションステートメント です


留学を終えた今、私は2つの「事業」に着手しようとしています。
  ◇1つは、2年間休校していた英語塾 「英語屋」の再開
  ◇もう1つは、英語教師のための勉強会 「SOLT」の立ち上げ

それぞれのミッションを私はこのように考えています:


1.TOEIC専門塾「英語屋」のミッション

ズバリ、大人がワクワク・ドキドキしながら英語を学べる場を提供すること。


中国語を学んでみて 気づいたこと。
それは「外国語を学ぶということのつまらなさ」。

あ、誤解しないでくださいね。
もちろん、外国語を学ぶということはそれ自体それなりに楽しいものです。
知らない単語や表現を覚えていくのはそれなりにワクワクするもの。


でも、「大人」にとって、そのワクワクって充分なんでしょうか?


英語以外の勉強、例えばマーケティング、コミュニケーション法、
リーダーシップ論、人生論などを学んだほうが、ずっとワクワクできるのでは?
小説やノンフィクションを読んでいたほうがドキドキできるのでは?


語学の学習を続けることの難しさはこの「ワクワク・ドキドキ感」の
欠如ではないかとわが身で実感したわけです。


したがって、英語屋は講師である私自身が
「ワクワク・ドキドキ」できる授業をすることにより、
英語以外のものも同時に学べる
「 大人の好奇心を満たす 」学校にしたいと思っています。
ワクワクドキドキ


この「ワクワク・ドキドキ」、全然バカにできません。
脳科学の先生のお話では、 「ワクワク」を感じるとき、
人間の脳は一番記憶に適した状態になっている
とのこと。
語学を学ぶには不可欠な要素ですね。



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2.英語教師のための勉強会「SOLT」のミッション

英語教師が、自らの教授法にチャレンジし続ける場を提供すること。


この メルマガの第1号 にも書いたのですが、
英語教師に大事なのは 「X○メソッド」「X○方式」などに頼ることなく、
じっくりと自分の生徒と彼らをとりまく状況を観察し、
生徒が学びやすいようにサポートすること・・こうイギリスで学びました。


自分の教授法に満足・慢心することなく、
学び続け、観察し続けること。

そして変わり続けていくこと。
英語教師を生業とするにあたって、
私が信条にしたいと思ったことです。

チャレンジし続けること

具体的には、3つのことを誓いました:
   (1)学び続けること。
   (2)その「学び」が自己満足ではなく、
     「生徒満足」につながるものとなるよう気をつけること。

   (3)その「学び」の過程・成果を、生徒や他の教師と共有すること。


英語教師のための勉強会「SOLT」の立ち上げを決めたのは、
「英語を教える」という仕事に真剣に取り組んでいらっしゃる方が集い、
切磋琢磨できる場を設けたいと考えたからです。


・・と書くと、えらい固い会を想像しますが、
要は、この会を通して「ワクワク・ドキドキ」したいなぁ〜と、
まぁそんなふうに思っているわけです。

知らないことを知る!しかも仕事に直結してること!
しかも同じような目標を掲げる仲間と一緒に!
ワクワクしないはずがないですよね。
そこの「自分を変えたい」教師のあなた〜、どうぞお気軽にご参加を!
    →  http://www.eigoya.com/SOLT.htm (現在休止中)



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さあ、これらが私の「 ミッション 」です。
これから一生やっていきたい仕事だからこそ、
私自身が「楽しめる」ことがポイントになっています。

そう、Mission for fun 感嘆符
Mission for fun!

楽しくなければ英語じゃあない、英語教育じゃあない。
つらくなったらこれを合言葉に長い道のりを歩んで行こうと思っています。


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参考文献参考文献


池谷祐二(2004) だれでも天才になれる 脳の仕組みと科学的勉強法
ライオン社

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